歌野晶午「密室殺人ゲーム」シリーズの読む順番・あらすじと感想・解説

歌野晶午さんの

「密室殺人ゲーム」

非常に面白いんですよ。

このシリーズは

  • 密室殺人ゲーム 王手飛車取り
  • 密室殺人ゲーム2.0
  • 密室殺人ゲーム マニアックス

と3部作になっています。

どんな話なのか?

どのあたりが面白いのか?

どの順番から読んだらよいのか?

この記事ではこれら3作品の

あらすじ面白いポイント感想についてご紹介します。

基本的にネタバレなしで、これから読みたい人に対して書いています。

ネタバレがある部分については、クリック表示で隠していますので、安心して読み進めてください。

密室殺人ゲームのシリーズについて

歌野晶午さんは、このシリーズを3作品出しています。

冒頭で説明したように、以下の3作品

  • 密室殺人ゲーム 王手飛車取り
  • 密室殺人ゲーム2.0
  • 密室殺人ゲーム マニアックス

3部作の作品なのですが、3作目に出版している「密室殺人ゲームマニアックス」は外伝的な、スピンオフ作品らしいので、正式な3部作目は2022年6月の段階ではまだ出版されていません

全てに共通している内容として、

5人の残虐な殺人者が、

自らの手で犯した狂気の殺人

推理ゲームとして出題しあう

というものになっています。

5人のうち1人は出題者=殺人者。

他の4人は探偵=回答者。

解答が終わったら次の人の番・・・というように、順番に回していく構図になっているので、小説自体は連作短編集のような形になっています。

密室殺人ゲームの読む順番

密室殺人ゲームシリーズは、シンプルに刊行順に読んで問題がありません。

時系列もそのままで物語が進んでいるからです。

刊行は、

密室殺人ゲーム 王手飛車取り(2007年)

密室殺人ゲーム 2.0(2009年)

密室殺人ゲーム マニアックス(2011年)

ですので、そのままこの順番で読んで頂くのが一番良いです。

物語は1刊ごとに完結しているのですが、あくまでシリーズとなっている為、

全体的な流れ

話がつながってくる部分

刊をまたいで謎になっている部分

というのがあるので、むしろこの順番で読まないと面白さが半減してしまうので注意です。

密室殺人ゲーム 王手飛車取り

密室殺人ゲーム 王手飛車取り

歌野晶午

2007年

 

読みやすさ:★★★☆☆

トリック :★★★★☆

オススメ度:★★★★☆

シリーズ1作目。

シリーズに共通して登場する5人の出題者が、平然と殺人をやっていきます。

~あらすじ~

〈頭狂人〉〈044APD〉〈axe〉〈サンギャ君〉〈伴道全教授〉。

奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。

ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである。

リアル殺人ゲームの行きつく先は!?

講談社「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」背表紙より

面白いポイント

名前も外見も特徴的な5人が、

順番に殺人を行い推理していく・・・

という異常なプロットにまず惹きつけられます。

それぞれがパソコン上のウェブカメラを使ってお互いを写しながら推理に花を咲かせるのですが・・・・

ダースベイダーの恰好をしたり、

ジェイソンマスクをかぶってたり、

見た目もそれぞれ特徴的です。

何よりも面白いのは、5人それぞれが殺人者であり、探偵でもあるという点です。

5人の内1人が実際に殺人を行い、その殺人について他の4人に出題をする。

解答もしくは、推理が終わったら次の人のターン。

その人間が殺人を行い、また4人に問題を出題する・・・

何を出題するのかは、出題者(殺人者)が自由に決めることができるのですが、ここで一つ問題が出てきます。

それは出題者が殺人者=犯人の為、フーダニット、つまり誰が犯人なのか?という基本的な問題を出すことができないという点です。

誰が犯人なのか?という犯人当ては、推理ミステリーの中では王将のようなものです。

これが封じられてしまっては、出題者も何を問題に出すのか悩みます。

そうするとおのずとアリバイ密室という、将棋で言う飛車の2つに問題が集中しますよね。

しかしこれでは限界がある・・・そんな中、出題者は知恵を振り絞って、より面白い殺人を考え、問題の作成に精を出します。

この密室殺人ゲームは、

「出題者は犯人である」

という絶対的な要素があるため、基本的には犯人当てゲームを問題として提起することができません

そのため、被害者と繋がりがあるケースや、自分の正体がバレる恐れのあることは封じられているんですが、その裏を返して身内を殺すという手法を取る、騙しのトリック、ラストの展開は素晴らしいものでした。

絶対的な密室殺人のため、中に入る事はできない。

できるとすれば、身内の犯行・・・。

しかし、さすがにそれはないだろう・・・

という発想すら壊して、身内である兄を殺すという極限の行為を実行に移す頭狂人の思い切りの良さには驚かされます。さらにこのトリックは、ミスリードにより「頭狂人は男である」と勝手に解釈した読者を欺く結果となりました。

被害者の情報が出ても、「妹が通報した」と書かれていれば勝手に頭狂人ではないと思ってしまいますよね。

 

通常、起きた殺人に対して疑われない為、「密室」を作ったり「アリバイ」を作ったりするものです。

推理小説は、どうしてもここが根底にある訳ですが、この小説はそんな定説を壊すような、ギリギリの部分を極端に描いた作品です。

この作品は、

「より面白いトリックをするため、面白い密室を作るため」

という動機のもと、殺人が行われます。

これがしたいから殺人を犯すという、通常では考えられない逆の考え方で殺人と推理が進められるという、従来の推理ミステリーへの挑戦的な作品だと感じました。

密室殺人ゲーム  2.0

密室殺人ゲーム 2.0

歌野晶午

2009年

 

読みやすさ:★★★☆☆

トリック :★★★★★

オススメ度:★★★★☆

シリーズ2作目。

またもや5人が殺人をして出題し合います。

ちなみにこの作品は、

本格ミステリ大賞を受賞しています。

~あらすじ~

あの殺人ゲームが帰ってきた!

ネット上で繰り広げられる奇妙な推理合戦。

その凝りに凝った殺人トリックは全て、五人のゲーマーによって実際に行われたものだった。

トリック重視の殺人、被害者なんて誰でもいい。

名探偵でありながら殺人鬼でもある五人を襲う、驚愕の結末とは。

講談社「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」背表紙より

面白いポイント

前回の終わりで大きな疑問を残すのですが、その謎もしっかり回収してくれます。

前回と比べると、5人全員で問題に対して立ち向かうような推理パートが多いので、読者も5人と一緒になって推理を進めていけるのがポイント。

途中で、一つ、大きな伏線の回収もあり、ダレることなく読み進めることができます。

ラストにはもちろん大きなトリックが待ち受けているので、終始楽しめる作品になっています。

まず、読み始めてコロンボちゃんが生きていることへの謎。

しかしこれは途中で「彼ら5人を崇拝している別の殺人者たちのゲーム」ということが明かされました。

警察で情報が流出し、その情報を見た人間たちが模範して行っているゲーム。

これによって一つ謎が回収され、なるほど!と驚かされます。

しかしみんな見事に模範しており、言葉使いやコミュニケーションが全く似てる。それほど、崇拝しているということの裏付けにもなりますね。

そしてこのことから、5人の人物像がまたもやぼかされます

そして同様に、前回の続きなのか?

と疑問に思いながら読み続けていた読者は前回明かされた「頭狂人が実は女」というのを捨てきれずに読み進めていたはず。

だからこそ、頭狂人が出した問題で殺された女の彼氏的な存在である「片桐」がまさか頭狂人だとは思わなかったはず。

この2つの事がらが、本の半分くらいの時点で出てくるので、とにかく終始飽きずに読み進めることができました。

ラストのコロンボちゃんの問題、殺人者、犯人でありながら被害者の役もやって出るという前代未聞のオチも見事で、前作を超えてくる面白い作品でした。

密室殺人ゲーム マニアックス

密室殺人ゲーム マニアックス

歌野晶午

2011年

 

読みやすさ:★★★☆☆

トリック :★★★★★

オススメ度:★★★★☆

シリーズ3作品目。

前2作はシリーズの正式なものですが、この作品は2.5とでも言えば良いのでしょうか、スピンオフ的な立場らしいです。

ですが、前2作を読んでいる人は必ず読んだ方が良い作品となっています。

~あらすじ~

〈頭狂人〉〈044APD〉〈axe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。

奇妙なハンドルネームを持つ5人がネット上で仕掛ける推理バトル。

出題者は実際に密室殺人を行い、トリックを解いてみろ、とチャットで挑発を繰り返す。

謎解きゲームに勝つために、それだけのために人を殺す非情な連中の命運は、いつ尽きる!?

講談社「密室殺人ゲーム 2.0」背表紙より

面白いポイント

またもや前作同様、5人による推理ゲームが展開されていきますが、今回の密室殺人には

鉄壁のアリバイや、

透明人間など、

非常に手の込んだ密室殺人推理ゲームを楽しむことができます。

昔ながらのトリックも、最新のトリックもどちらも使われており、現代だからこそ、現実にあり得そうな展開で楽しませてくれます。

そしてラストの意外性に驚かされます。

ただ、前2作があってこそのマニアックスという作品になっているので、是非2作を読んだ後で手に取ってほしい作品です。

途中で出てくる光学迷彩のトリックが、現代であり得そうな話なので、SFとも取れる密室殺人で興味深いですよね。

そしてそのトリックも、本当なのか、嘘なのかわからないというオチも、それはそれで面白いです。

ラストはサブタイトル「そして誰もいなかった」とある通り、1人5役を演じていたという意外性に満ちたオチ。

これは前作の展開「5人は入れ替わりだった」という意外性をさらに利用したミスリードであるの所がすごいです。

前回の展開で行くと、「またこの5人は新しい5人なのかな?」という読者の先入観を見越しての非常に面白いオチだと感じました。

「密室殺人シリーズ」まとめ

密室殺人ゲームは、まだ正式なシリーズ3作目が2022年6月の段階で出ていません。

いつか出してくれるはず・・・なので楽しみに待ちましょう。

歌野晶午さんは個人的に好きな作品が多く、個人的には

「春から夏、やがて冬」

という作品がとてもオススメです。

是非、読んでみてください。それでは。

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