『たかが殺人じゃないか』あらすじ紹介と前作・シリーズについて

本屋でふと手に取った人

噂を耳にして手に取った人

ネットで話題になって手に取った人

様々だと思いますが、おそらく今回の

『たかが殺人じゃないか』

初めて辻真先さんの作品に触れた人は多のではないのでしょうか。

 

2020年のミステリーランキング3冠達成というのは、それほど注目される偉業です。

もちろん興味の持った全ての人たちが読んでくれれば一番良いことですが、中には読むか悩んでいる人もいると思います。

そんな人に向けて書いた記事になります。

まず結論から言うと、

非常に面白いので是非読んでほしいです。

これから読む人にできるだけ楽しんで読んで欲しいので、ネタバレはしません

どんな作品なのか?

前作を読んだ方が良いのか?

など、雰囲気をご紹介できればと思います。

『たかが殺人じゃないか』の簡単なあらすじ

昭和24年、ミステリ作家を目指しているカツ丼こと早見勝利は、名古屋市内の新制高校3年生になった。

旧姓中学卒業後の、たった一年だけの男女共学の高校生活。

そんな中、顧問の勧めで勝利たち推理小説研究会は、映画研究会と合同で一泊旅行を計画する。

顧問と男女生徒5名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行だった。

そこで巻き込まれた密室事件。

更に夏休み最終日の夜、キティ台風が襲来する中で起きた廃墟での首切り殺人事件!

二つの不可解な事件に遭遇した勝利たちは果たして・・・・。

著者自らが体験した戦後日本の混乱期と、青春の日々をみずみずしく描き出す。

『たかが殺人じゃないか』単行本あらすじより

辻真先氏が描くリアルな昭和背景

秀逸なトリック、ラストの展開など評価されるべきところが多い作品です。

しかし個人的には、この昭和日本という時代の背景描写こそが、一番の読み応えであり、辻真先さんの作品を読む上での醍醐味だと感じています。

『たかが殺人じゃないか』の舞台は昭和24年の名古屋であり、辻真先さんはこの時代おそらく学生として実際に名古屋で生活していた時期になります。

この昭和24年がどんな時代だったのか?

それを簡単に振り返ることで、この作品はもっともっと楽しむことができる作品になっています。

もちろん、私はその時代を生きていないので詳しいところはわかりません。

しかしこの時代の人は、こんな部分で混乱していたり、こんな変化の中で生きている人なんだなぁと想像することで、より登場人物の心理描写をくみ取ることができます。

ということでこの時代の背景を少しおさらいします。

学生改革よる影響

あらすじで書いていた通り、この昭和24年(1949年)は学制改革が進められた時期でした。

物語の4年前である1945年、日本は第二次世界大戦で連合国軍に敗北しています。

勝利した連合国軍の改革によって、日本の教育課程は大きく変化

それが学制改革です。

とてもざっくり説明すると、今までは小学校6年・中学5年という体制だったのが、小学校6年・中学校3年・高校3年という今現在と同じ学校制度である新体制(通称633)と言われる形に変化したのです。

これによって、当時中学5年生で卒業を迎える学生たちは、新体制で考えると1年就学が不足することになりますので、新体制である高校3年生に編入することになります。

主人公である風早勝利は、まさにこの過渡期を経験することになり、友人たちと共に1年間だけの特別な高校3年生生活を送ることになるのでした。

男女共学で戸惑いが隠せない時代

新体制で633に変わりましたが、それ以上に学生を混乱させたのが

『男女共学』でした。

実は新体制が導入されるまで日本は、

小学校3年生を境に、男女別学となっていました。

今では考えられませんが、わずか7歳前後で、男と女は学校を別にして教育を受けていたのです。

『たかが殺人じゃないか』の作中でも、こう語られています。

時代が殺気だっていた戦時中なぞ、幼なじみの女の子と口をきいただけで、男の子は軟弱だと殴られていた。

そんな時代から急に、

「机を並べて男女一緒に勉学しよう!」

だなんて言われても、男も女もどんな身の振り方をすればよいか、理解が追いつかない状態だったんじゃないかと想像がつきますよね。

 

私たちはこのような歴史を、調べて知識を得ることは可能です。

しかし、実際にこの時代を体験していない以上、この渦中で生活していた人たちの気持ちや苦しみなんてわかりっこありません。

だからこそ。

辻真先氏が描くことに意味があります。

この時代背景の重さと、正確な史実性、臨場感。

そしてこの時代だからこそのミステリーや、トリックを扱うのが辻真先さんの面白いところです!

キティ台風の到来

昭和24年。

それは台風10号が日本に直撃した年でもあります。

この「キティ」というアメリカ人女性のような台風の名前。

今では聞きなれているかもしれませんが、この台風に英語圏の人の名前を付ける「国際名」が使われ始めたのも、戦後日本からのことだったりします。

敗戦した日本はアメリカの占領下にあったため、様々な部分で欧米文化が入ってきますが、台風の名前まで変わってくるとは面白いですよね。

小さいかもしれませんが、このような細部までしっかりと当時の時代を描いている作品になります。

前作を読んだ方が良いのか?

本作は『昭和シリーズ』としてシリーズ化されており、前作に『深夜の博覧会』という作品があります。

私は前作である深夜の博覧会を読んだ後に、たかが殺人じゃないかを読了しています。

まず結論からいうと、個人的には

『前作は読んだ方が良い』

と思っています。

何故なら『たかが殺人じゃないか』発刊した時点でシリーズとなったからです。

シリーズは1冊だけではシリーズになりません。

続編が出たことでそれは繋がりのある『シリーズ』となります。

『たかが殺人じゃないか』だけだったら、その本だけを読めばよいですが・・・

それに登場する人物の、過去の物語が語られている前作があるなら、やっぱり勧めないわけにはいきませんよね。

ただこれは、前作を読まないと『たかが殺人じゃないか』を100%楽しめないのか?という話ではありません。

おそらく、私も前作を読まないで『たかが殺人じゃないか』を読んでいたとしても、100%楽しめましたと思います。

しかし深夜の博覧会を読んでいると、120%楽しめますよ、ということです。

より一層、登場人物に感情移入ができるので、追加で楽しめるという意味で、前作は読んだ方が良いという意味です。

ただ、矛盾しているように聞こえますが、前作は結構人を選ぶ作品かなと感じます。

あらすじを読んで、読むか決めても良いかもしれません。

前作「深夜の博覧会」あらすじ繋がり

【あらすじ】

昭和12年5月、銀座で似顔絵を描きながら漫画家になる夢を追う少年・那珂一兵を、帝国新報の女性記者が訪ねてくる。

開催中の名古屋汎太平洋博覧会に同行し、記事の挿絵を描いてほしいというのだ。

超特急燕号での旅、華やかな博覧会、そしてその最中に発生した、名古屋と東京をまたがる不可解な殺人事件。

博覧会をその目で見た著者だから描けた長編ミステリ。

『深夜の博覧会』あらすじより

深夜の博覧会は、たかが殺人じゃないか以上に歴史的な内容が多い作品になっています。

昭和12年は、あの有名な「満州事変」が起きてから数年後であり、満州が『満州帝国』として日本の統治下にあった時代です。

5族協和をスローガンに、若者は満州帝国に夢を見て、アジアを引っ張ろうとした時代であり、中国がアヘンに侵されていた時代。

かなり史実に基づいた内容ではありますが、複雑な内容でもありますので歴史が苦手な人には読みにくい作品かもしれません。

しかし満州事変などの歴史に興味のある人や、当時の影響下についての描写を知りたい人にはガッツリハマる作品です。

本作との繋がりについて

「昭和シリーズ」は

  • 『深夜の博覧会』昭和12年
  • 『たかが殺人じゃないか』昭和24年

12年周期でのシリーズとなっています。

辻真先さんが現在執筆している更なる続編は昭和36年が舞台となっているそうです。

『深夜の博覧会』で登場したメインの登場人物の3人『たかが殺人じゃないか』で再度登場します。

何よりも面白いのは、12年の時を経ることで成長した姿で登場する点

特に『深夜の博覧会』では探偵役で主人公だった那珂一兵

伯爵の助手だった別宮操

この二人の人物は12年後の昭和24年に『たかが殺人じゃないか』頼もしい姿で登場します。

終盤の展開では、前作を読んでいるか、読んでいないかで感じるものが変わってくるかもしれません。

まとめ:ミステリー好きなら目を通すべき作品

楽しく読んで欲しいので内容はできるだけ語りませんが、ミステリー作品としても一級品となっています。

辻真先さんはその多彩な才能と多岐にわたる知識で日本の本格ミステリーにも様々な手法を使ってアプローチしてきた素晴らしい小説家です。

『たかが殺人じゃないか』はそんな辻真先さんの知識と歴史的経験、多角的なミステリーへのアプローチ、どちらも兼ね備えた集大成のような作品だと感じる作品になっています。

間違いなくミステリー好きなら読むべき一冊だと感じます。

是非、手に取って読んでみてください。

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