湊かなえ『少女』わかりやすく解説。因果と登場人物のネタバレ考察。

湊かなえさんの小説『少女』

非常に面白い、上手くできた内容になっています。

中でも登場人物同士が様々なところで繋がっているのがこの小説の醍醐味です。

しっかり読まないと、張り巡らされた伏線に気づかない場合もあるくらい。

という事でこの記事では

どのあたりが因果になっているのか

結論、何が言いたいのか

この辺りをわかりやすくご紹介します。

『少女』の小説を読んだうえで、

  • 登場人物を整理したい!
  • 紫織の因果関係を知りたい!

こんな疑問やモヤモヤをはっきりさせたい人には有益な記事になるかと思います。

『少女』登場人物を整理する

まずはざざっと簡単にの登場人物を整理しましょう。

※ここからネタバレ含みますので、読んでいない人はご注意ください。

小説内では基本的に、由紀視点(⋇⋇)敦子視点(⋇)にて物語が語られます。

登場人物簡単紹介

由紀  :主人公(⋇⋇)。桜宮高校2年。

敦子  :主人公(⋇)。桜宮高校2年。

紫織  :高校2年の時に転校してきた由紀達の友達。

おっさん:老人ホームに努めているシャイな人。

田中昴:小児病棟に入院している小学5年。

タッチー:昴と同室の子。通称「肉まん」

小倉  :由紀たちの高校の国語教師。

牧瀬  :由紀の彼氏。

由紀の祖母:認知の暴力ばあさん

三条  :三条ホームの社員。

星羅  :紫織の親友で自殺した子。

『少女』因果関について解説と考察

めぐりめぐるような因果関係少女の醍醐味です。

由紀と敦子、二人の物語。

もちろんそうなのですが、

因果で考えると紫織が主人公です。

紫織から始まり、紫織で終わる。

ここでは主に紫織自殺についての因果にだけ焦点を絞っていきます。

時系列で追ってみます。

【過去】

 紫織

黎明館の時、「嘘チカン」をして示談金を稼いでいた(272P)

この時、被害にあったのがタカオ(おっさん)である。

⇒おっさん仕事退職、女子高生に不信感をいだく。

【去年の6月】

 由紀

学校に「ヨルの綱渡り」の原稿を入れたバッグを学校に忘れる(20P)

⇒国語の担任「小倉」に原稿を盗まれる。

職員室のパソコン、3年生の成績表が無防備に置かれているのを目撃。

【2月初旬】

由紀敦子

小倉のパソコンを覗き

「ラブ、ダイアリー、ウィズ、セーラ」

というブログを見つける。

セーラとの不純な関係発見。セーラが黎明館高校の生徒だと判明(156P)

 

由紀

全学年の国語の成績表を学校関係者にメールで送信(157P)

⇒結果、小倉が3月末に学校退職。

 

敦子

黎明館の裏サイトに「セーラは援交マニア 今の彼は盗作おやじ」と書き込む(158P)

セーラ、学校でいじめられ始める(277P)

【春休み】

小倉

事故で死亡(28P)

実際は原稿を紙吹雪にしながら電車に飛び込み自殺。

⇒この様子を牧瀬が目撃、紙吹雪入手(110P)

【2月】

セーラ(星羅)、バスタブで自殺(32P)

死ぬ前、紫織に99通メール送信。

紫織シカト。

【4月】

高2、黎明館高校から紫織が転校してくる(29P)

【6月】

由紀牧瀬と付き合う(37P)

【7月27日】

敦子

シルバーシャトーで高雄(おっさん)と出会う(62P)

 

由紀

朗読の帰りにタッチ―&昴と出会う(86P)

7月31日

由紀 

肉まんから手術の前に昴と父を合わせてあげて欲しいと頼まれ、承諾(138P)

 

昴の父の情報を手に入れる為、三条ホームへ行き、通称「三条」と出会う。

⇒実は三条は紫織の父(最後ページで紫織の苗字が瀧沢だと判明)

 

昴の父がタカオタカオという名前だった(150P)

 

敦子

黎明館裏サイト隣に「死の預言書」というサイトを見つける。

⇒牧瀬が死を見るために立ち上げたサイトだった(190P)

 

「8月4日因果応報 たかおたかお地獄に堕とす」との書き込みを発見。

⇒これはタッチーが書いていた(263P)

【8月1日】

敦子

おっさんと花火へ。

ヨルの綱渡り掲載の雑誌をおっさんが所持していた。

おっさんの家で読むことに(186P)

由紀

牧瀬と花火へ。

【8月3日】

由紀牧瀬

三条に会う。家での腹いせに高校生をいたぶろうとしていた三条に牧瀬たちが反撃。

三条の本名が「滝沢」だと判明。

タカオが痴漢で捕まったことを知る(206P)

敦子

おっさんを守るために家へ。

おっさんが痴漢の冤罪で女子高生にハメられたことを聞く。

⇒紫織が嘘チカンでハメていた(272P)

 

同情と守りたい気持ちでおっさんに好意を抱く(221P)

【8月4日】

由紀 

シルバーシャトーに行く。

エントランスで敦子と遭遇、タカオ(おっさん)に息子の病気の件を伝える(226P)

その後、由紀、敦子、おっさんの3人で病院へ。

肉まん(タッチー)が実は昴という名前で、おっさんの子供だ判明(昴とタッチーが入れ替わっていた)

しかも実はおっさんは恨まれていてナイフで刺される(242P)

⇒チカンの冤罪で捕まっていたおっさん。そのせいで母と会えなくなり恨む形に。

とことん可哀相なおっさんである。

【9月1日】

紫織

会話の中で紫織の父があの「三条」だったことが判明。

そして黎明館時代に「嘘チカン」で金を稼いでいたことが発覚。

友達がハメようとした人と何故か付き合い、自殺したと話す(272P)

⇒友達とはセーラ。彼女も同じことを小倉にしようとするが何故か付き合った

 

由紀

紫織の父と知らずに三条から金を巻き上げようと考える。

紫織の発言で、星羅という言葉が出てくる。

自殺した友達=星羅となる。

遺書・つづき

紫織の父、わいせつ行為で示談金10万を払わず逮捕。

 

紫織

星羅の死を自慢していた紫織が、それがただのナルシストのたわごとだと気づく。

自殺。

これで物語は終了です。

少女の素晴らしい点として、綿密に練られた人間関係があります。

全ての始まりは、紫織セーラ「嘘チカン」です。

最終的にはこの二人は死んでいます。

敦子の裏サイト書き込みによって、間接的にセーラが死亡。

そして由紀によって、間接的に紫織が死にます。(悪いのは紫織の父、三条ですが逮捕されたことによっていじめが発生して自殺)

つまり、身近な人の死を感じたいと思っていた由紀と敦子の二人から、最も身近にいた友達である紫織が死ぬんですよ。

あまりにも皮肉なお話ですよね。

『少女』疑問点のについて

パラパラと読んでいたら

ちょっとわかりにくい部分もあるので

一応説明させて頂きますね。

①一番最初の『遺書』は誰が書いたのか?

少女の一番最初のページにある「遺書」

これは誰が書いたものかというと

物語ラストにおそらく自殺したであろう

「紫織」の遺書になります。

文面からもわかりますが『少女』ラストのページに「遺書 つづき」の記載があります。

そこには星羅の自殺について記載があり、紫織のサインもあります。

この少女という小説は、紫織で始まり紫織で終わっているんです。

少女という小説は因果というのがキーワードになっています。

因果応報という事です。

皆さんここで元凶を考えて下さい。

紫織が痴漢の冤罪をおっさんに行ったことで始まったともいえませんか?

つまり紫織で始まり紫織で終わる事こそ、まさしく因果応報ということになります。

自分がやってきた悪い行いは、最後には自分に返ってくる。

由紀の婆さんが口を酸っぱくして言ってきた言葉そのものです。

学校裏サイトの因果について

敦子が寝る前にチェックして寝ているという、

学校の裏サイト。

敦子は剣道の大会でやらかした時、

悪口を言われたのでスポーツ推薦を断った過去があります。

そして敦子は過去に一度だけ

他の学校の裏サイトに投稿したことがあります(46P)

7月17日の時点で、半年前に投稿したと書かれているので1月~2月前後。

それは由紀と小倉のパソコンを見た日の夜。

「セーラは援交マニア」悪口を言いました。その後は怖くて覗いていないですが、これによってセーラはいじめの標的となります。

そしてセーラは仲の良かった紫織にメールを送りますがシカトされ続け、バスタブで自殺しています。

この因果の面白いのは、最後のシーンで紫織が「星羅の墓参りに行く」と言った時、由紀はなんとなく「星羅」ってまさか、あのセーラかも?と気づきそうでしたが、敦子はというと、リズのバッグに夢中で全く気付かなかったという点。

実際の所、セーラを殺したのは間接的ではありますが敦子です。

裏サイトの書き込みのせいでセーラは迫害されて、耐えられなくなり自殺しました。

その殺した本人が良くも悪くも全く気付かない、というオチが女子高生の無知さ・純粋さ・怖さだなぁと感じます。

③2人が死を見たいと思わなくなった瞬間

この小説の、本来の本筋である

「身近な人の死を見てみたい」

という欲望はどこで途絶えたのか、というお話です。

これは実は敦子の方が早く気づいており、結果的には夏休みの間に2人とも「死は良いもんじゃない」と気づきました。

敦子は、7月29日に病院で水森さんが喉にモチを詰まらせた時です。

この時彼女は、「人の死を見ても語ったり誰かに話したりしたいと感じない」と思いました。

目の前で人が死ぬかもしれない恐怖を感じたからです。

そして由紀は8月4日。

おっさんが刺されて血が噴き出すのをみた瞬間、手の甲を切られた死の記憶を深く思い出します。身近な死を見なくても頭の中にこびり付いていた事を思いだし、死は美しくもなんともないと悟り、死を見ようとしていた自分を笑います(246P)

しかし途中でお話した通り、せっかく死を見たくないと思い始めたのに、最後の最後に紫織が死ぬっていう・・・。

敦子由紀の関係が面白い!

この小説の面白い部分として、

主人公2人のすれ違いがあります。

お互いは大の仲良しだったからお互いの事は何でもわかる。

そんな感じ。

でも実際は何もわかっていない。

自分から見た相手の印象やイメージで勝手に決めつけていただけなんです。

例えばこのシーン。

病院に小鳩会が来て敦子がエプロンシアター頼まれます。

この時、敦子は心の中でこう考えます。

由紀ならはっきり断るだろうな」

しかし実際は真逆。由紀はしっかりエプロンシアターをこなしています(146P)

このあたり、二人はすれ違っているとわかりやすく読者に伝えてくれているなと思います。

結果、最後の最後にその間違いに由紀も敦子も気づくわけですが。

しかしこの中間あたりのシーンで、お互いが「由紀(敦子)だったらこうだろうな」と予想するシーンがあるのが非常にリアルですよね。少女では非常に面白い点かなと思います。

結論、少女とは。

因果関係が非常に面白い「少女」ですが

題名が何故「少女」なのでしょうか。

これは個人的な意見ですが、この小説は

少女という誰もが通る未成熟で無知な生き物の生態

を描いているのでは、と感じました。

例えば、おっさんに好意を抱いていた敦子

しかしおっさんが息子に刺されてから由紀と走り出してこう発言しています。

敦子「そっか、おっさん、だいじょうぶだったのか。好きでたまらないと思っていたのに、病院を出てから今の今まですっかり忘れてた」(251P)

少女特有の、熱くて冷めやすく、信じていたのに簡単に裏切りそうな感じ。

感情の赴くまま行動し、良くも悪くも、善悪の境目がないからこそ起こり得る、無慈悲な悪意というものです。

少女は多くの因果を産んでいますが、敦子と由紀はこの因果について強く自覚を持っていません

この部分こそが、非常にシュールな作品にしている大切な要素に違いありませんよね。

そしてラストのシーン。

あれだけの事をやって、敦子と和解できた由紀が、結局「三条(滝沢)」に示談金をせまり拒否したから警察に突き出すという、また因果を生みそうな事をしているんですよね。

湊かなえさんの初期の頃の作品ですが、本当に素晴らしい作品だと感じます。

少女」の映画の配信先は?

少女は2016年に本田翼さん主演で映画化されています。

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少女」好きにオススメ作品

「少女」は複雑に絡み合った因果関係がとても面白い作品です。

そんな人には米澤穂信さんの

「儚い羊たちの祝宴」がオススメです。

短篇小説ながら、実は色々な部分が繋がっている作品です。

私はこの作品が大好きで、米澤穂信さんの作品を色々と読み漁りました。

秋は外出するのがおっくうになるので、読書が一番ですね。

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